就労定着支援の利用条件とは?料金や対象者を詳しく解説
「就職できたけれど、職場での悩みが尽きない」「一般就労を果たしたものの、長く続けられるか不安」。このような声は珍しくありません。そこで注目されているのが、就労定着支援です。定期的な職場訪問や相談対応を通じて、働き続けるためのサポートを提供する制度について、利用条件や支援内容を詳しく解説します。
障がい者雇用の現状

日本の障がい者雇用は、1976年の雇用率制度義務化以降は増加傾向にあります。しかし、企業での定着率については、依然として課題が残されています。2017年の調査によると、就職1年後の職場定着率は以下の通りです。
障がいの種類 | 定着率 |
知的障がい | 68.0% |
発達障がい | 71.5% |
身体障がい | 60.8% |
精神障がい | 49.3% |
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター|障害者の就業状況等に関する調査研究
就労定着支援とは?

就労定着支援とは、障がいのある方の職場定着を専門的にサポートする制度として、2018年4月に創設されました。この制度は、障害者総合支援法の改正により、新たに設けられた福祉サービスです。生活リズムの乱れ・業務上のミス・コミュニケーションの困難さなど、就労に伴う、さまざまな課題の解決をサポートしています。
就労定着支援と就労移行支援の比較
就労移行支援は一般企業への就職を目指す方への支援です。具体的には、就労に必要なビジネスマナーの習得やパソコンスキルの向上、コミュニケーション能力の訓練など、就職に向けた準備を重点的におこないます。
一方、就労定着支援は、既に一般就労している方を対象としており、職場での定着を図るためのサービスです。ご本人との面談や職場訪問を定期的におこない、働く中で発生する課題の解決を支援します。就職後の環境変化による不安や悩みに寄り添い、企業と連携しながら働きやすい職場環境づくりを進めていきます。
就労定着支援を利用するための条件

就労定着支援の利用には一定の条件が設けられています。利用開始時期や期間・費用負担などの具体的な条件について、項目ごとに詳しく見ていきましょう。
就労定着支援の対象となる方
就労定着支援の利用対象は、障がい福祉サービスを利用して一般就労を果たした方です。具体的には、就労移行支援・就労継続支援A型B型・自立訓練・生活介護などのサービスを経て就職し、就労後6ヶ月が経過した方が対象となります。
また、職場環境の変化により生活リズムが乱れている方や、職場でのコミュニケーションに不安を感じている方も支援の対象を受けられます。休職中の方でも一定の条件を満たせば利用可能です。65歳未満で支給決定を受けた方は、65歳以降も継続して利用できます。利用開始時には、お住まいの自治体で障がい福祉サービス受給者証の申請が必要です。
就労定着支援の利用期間
就労定着支援の標準的な期間は、就職後6ヶ月から3年6ヶ月までです。最初の6ヶ月間は、それまで利用していた事業所から支援を受けられる仕組みが整っています。その後、専門の就労定着支援事業所による支援に移行し、1年単位で更新を重ねていきます。
利用者の状況に応じて最長3年間の継続が可能です。支援終了後も定着に不安がある場合は、地域の障がい者就業・生活支援センターが支援を引き継ぎます。なお、一度支援を終了した後でも再度支援が必要になった場合は、3年6ヶ月から就労期間を差し引いた、残りの期間が給付対象となります。
就労定着支援の料金について
就労定着支援の利用料金は、障がい福祉サービスの一般的な仕組みと同様に、利用者の前年度の世帯所得に応じて、負担上限月額が設定されています。利用者の負担は原則としてサービス費用の1割で、残りの9割は自治体が負担します。
具体的な負担上限額は世帯の所得区分によって決定され、生活保護受給世帯は0円、市町村民税非課税世帯は0円、市町村民税課税世帯(一般世帯)は9,300円です。この金額は月額の上限であり、サービスの利用頻度が増えても、設定された上限額以上の負担は発生しません。
※自治体によって料金体系が異なる場合があるため、実際の利用に関しては各自治体の窓口で確認しましょう。
就労定着支援を無料で利用できる対象者
就労定着支援を無料で利用できる対象者は、主に二つの区分に分けられます。生活保護を受給している世帯と、市町村民税非課税世帯です。市町村民税非課税世帯の場合、障がい者本人または障がい児の保護者の属する世帯であることが条件となります。
また、障がい福祉サービスを利用する、障がい児の保護者が市町村民税非課税世帯に属している場合も、無料での利用が可能です。これらの条件に該当するかどうかの確認は、世帯の所得状況を証明する書類の提出によっておこなわれます。利用開始時には、あらかじめ書類を準備しておく必要があります。
就労定着支援のサービス内容

支援の中心となるのは月1回以上の定期的な職場訪問です。支援員は職場を訪問し、利用者本人との面談を通じて課題の把握と解決に努めます。遅刻や欠勤の増加・職場でのコミュニケーションの難しさ・体調管理の課題などについて、丁寧にヒアリングをおこないます。
特に障がい特性への理解を深めるための助言や、業務内容の調整に関する提案など、企業側への支援も重要な役割です。医療機関や障がい者就業・生活支援センターなどの関係機関とも連携し、包括的な支援体制を構築しています。
【具体的な支援の例】
- 職場でのコミュニケーション方法の助言
- 業務の優先順位付けのサポート
- ストレス管理の方法の提案
- 通院や服薬管理についての助言(利用者の状況に応じて)
- 睡眠時間の確保や規則正しい食事摂取など、基本的な生活習慣の改善支援
就労定着支援のメリット

就労定着支援には、就職者と企業の双方にとって大きなメリットがあります。この章では就労定着支援のメリットについて解説します。
就職者側から見たメリット
就職後は新しい環境での生活が始まるため、誰しも不安や課題を抱えるものです。就労定着支援を利用することで、職場での不安や悩みを専門家に相談できる環境が整います。就労定着支援のメリットとして以下の点が挙げられます。
- 定期的な面談による生活面の課題解決サポート
- 職場での困りごとに関する、相談対応と解決策の提案
- 企業への配慮要望の適切な代弁と調整
- 体調管理や通勤に関するアドバイス
- 職場でのコミュニケーション方法の助言
- 業務上の課題に対する具体的な改善提案
企業側から見たメリット
企業側にとっても就労定着支援は大きなメリットがあります。障がいのある従業員一人ひとりの特性を理解し、適切な配慮を行うことは容易ではありません。就労定着支援員による専門的なサポートにより、以下のような効果が期待できます。
- 障がい特性に応じた適切な対応方法の習得
- 定期的な職場訪問による状況確認と助言
- 職場環境の調整に関する具体的な提案
- 業務内容の見直しに関するアドバイス
- 従業員との円滑なコミュニケーション方法の確立
- 障がい者雇用に関する知識やノウハウの蓄積
就労定着支援事業所の選び方

就労定着支援事業所を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。地域の相談支援専門員への相談から始め、事業所の支援実績・障がい特性への理解度・支援員との相性など、様々な観点から検討することが大切です。ここでは、適切な事業所選びのために確認すべきポイントについて詳しく解説していきます。
自治体や専門機関に相談してみる
就労定着支援事業所を選ぶ際には、まず地域の相談支援専門員や障がい者就業・生活支援センターに相談してみましょう。これらの専門機関は地域の事業所の特徴や支援内容を熟知しており、個々の状況に合わせた適切なアドバイスをしてくれます。様々な情報を聞くことで、自分に合った事業所を選ぶことができます。
障がい特性への理解と対応状況を確認する
事業所によって得意とする支援の分野が異なります。精神障がい・発達障がい・身体障がいなど、それぞれの特性に応じた支援の実績や、経験が豊富な事業所を選ぶことが重要です。
事業所見学の際には、具体的な支援方法や対応事例について詳しく質問することで、その事業所の対応力を見極めることができます。特に医療機関との連携体制や、緊急時の対応方針についても確認しておくことがおすすめです。
支援員との相性と事業所の雰囲気を確認する
就労定着支援では、支援員との信頼関係が重要な要素となります。事業所見学や面談を通じて、支援員の姿勢や対応・性格が自分に合っているのかを確認することが大切です。
また、事業所全体の雰囲気も重要な判断材料となります。利用者の話に耳を傾け、個別の状況に応じて柔軟に対応できる体制が整っているかどうかを確認しましょう。支援員との相性が良好であれば、困ったときにも相談しやすく、より効果的な支援を受けることができます。
就労定着の実績と支援体制の状況の確認
事業所の就労定着実績も重要な選択基準です。特に、自分の希望する職種や働き方に関する支援実績があるかどうかを確認します。定着率や支援事例の具体的な内容・企業との連携体制なども重要な判断材料です。定期的な職場訪問の頻度・利用者からの相談への対応方法・関係機関との連携体制なども確認するポイントとなります。
【まとめ】就労定着支援の利用条件は自治体によって異なる!まずは問い合わせてみよう
就労定着支援は、障がいのある方の職場定着を支える重要な福祉サービスです。一般就労後の環境変化による課題や不安に対して、専門的な立場からサポートを提供します。
就労定着支援の利用をお考えの方は、さいたま市浦和区にあるアイトライ浦和センター(旧:アイトライさいたまセンター)にご相談ください。アイトライの就労定着支援は、卒業生の3年職場定着率92%という実績があり、安心してご利用いただけます。
浦和駅から徒歩5分の場所で、皆さまのご相談をお待ちしております。