就労移行支援と就労継続支援の違いとは?選び方と特徴を徹底解説
障がいのある方の就労支援には、就労移行支援と就労継続支援という2つの制度があります。両者は名称が似ているため混同されやすいものの、目的や対象者・支援内容は大きく異なるため、注意が必要です。この記事では、就労移行支援と就労継続支援それぞれの特徴や違い・選び方のポイントについて解説します。
就労移行支援とは

就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障がいのある方向けの福祉サービスです。企業で働くために必要なスキルを習得し、実際の就職までをサポートする制度となっています。
就労移行支援の対象者
一般企業での就労が見込まれる18歳から64歳までの方が対象です。障害者手帳の有無は問われませんが、就労への意欲と企業での就労が可能と見込まれる状態であることが求められます。
年齢要件については、18歳未満の場合でも児童相談所の意見書があれば利用が可能です。平成30年4月からは65歳以上の方も、一定の要件を満たせば利用できるようになりました。対象となる障がいの種類も、身体障がい・知的障がい・精神障がい・発達障がいなど幅広く、難病のある方も含まれます。
※利用にあたっては、一般企業での就労を目指す明確な意思があることが重要な条件です。
提供されるサービス内容
就労移行支援では、利用者の就労に向けて包括的なサービスを提供しています。サービスは以下の5つに分類され、段階的に支援が行われています。
- 生産活動・職場体験機会の提供
- 実際の就労場面を想定した実践的な訓練
- 日常生活・社会生活支援
- 生活習慣の確立と対人コミュニケーションの向上
- 職場体験の機会提供
- 企業での実習を通じた就労イメージの具体化
- 就職活動支援
- 履歴書作成から面接対策まで
- 就職後の定着支援
- 就職後6ヶ月間のフォローアップ
利用期間と利用条件
利用期間は原則2年以内です。ただし、就職の可能性が高まっている場合や、利用者の状態によって必要と認められる場合は、期間の延長が認められることがあります。利用条件としては、障害者総合支援法に基づく支給決定を受けることが必要です。また、定期的な通所が可能な状態であることや、就労に向けた意欲があることなども重要な条件となります。
訓練内容と特徴
訓練内容と特徴は以下の通りです。
基礎訓練 | 挨拶や身だしなみ・通勤リズムの確立など、就労の基本となる要素を身につけます |
応用訓練 | パソコンスキルやビジネスマナー・実務作業など、実践的な職業能力の向上を図るほか、ストレス対処法や体調管理の方法なども学びます |
就職活動 | 職場実習や企業見学・面接練習などを通じて、実際の就職に向けた準備を進めていきます |
訓練期間中は基本的に賃金は発生しませんが、就職に向けた体系的な支援を受けることが可能です。
就労継続支援とは

就労継続支援は、障がいや病気のために一般企業での就労が困難な方に、働く場を提供する福祉サービスです。A型とB型の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。
就労継続支援A型の特徴と対象者
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んで働く形態です。具体的な対象者は、以下の方が対象となります。
- 就労移行支援を利用しても一般企業での就労に結びつかなかった方
- 特別支援学校を卒業後に就職活動を行ったが雇用に結びつかなかった方
- 過去に就労経験があるものの現在は雇用関係にない方
年齢は原則として65歳未満で、雇用契約を結ぶため最低賃金以上の給与が保障されます。令和2年度の実績では、平均月額給与は79,625円となっています。
就労継続支援B型の特徴と対象者
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに働く制度です。令和2年度の実績では、平均月額工賃は15,776円となっています。作業内容はデータ入力・お菓子作り・包装・発送作業・清掃・農作業・クリーニングなど多岐にわたります。
対象者は以下の通りです。
- 50歳以上の方
- 障害基礎年金1級受給者
- 年齢や体力面で一般企業での就労が困難な方 など
年齢制限がなく、体調や状況に応じて柔軟な働き方ができます。必要なスキルが身につけば、A型や一般就労への移行も可能です。
A型とB型の主な違い
A型とB型の最も大きな違いは雇用契約の有無です。A型は雇用契約に基づく就労のため、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法規が適用されます。一方、B型は雇用契約を結ばないため、これらの法規は適用されません。作業内容も、A型は一般企業に近い業務が中心となりますが、B型はより簡易な作業が中心です。
利用年齢は、A型が原則65歳未満なのに対し、B型は制限がありません。また、A型は一般就労への移行も視野に入れた支援が行われますが、B型は利用者の状況に応じた働き方を重視しています。
就労移行支援と就労継続支援の違いについて

就労移行支援と就労継続支援には、目的や内容に大きな違いがあります。この章では双方の違いについて解説します。
目的の違い
就労移行支援は一般企業への就職を目指す訓練が、主な目的です。利用者は就職に向けた準備期間として利用し、様々なスキルを身につけていきます。一方、就労継続支援は働く場の提供が目的です。就労継続支援A型は雇用契約に基づく就労機会の提供、B型は福祉的就労の場として機能しています。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
目的 | 就労するために必要な知識・能力を学ぶ | 就労や生産活動の機会を提供 | 就労や生産活動の機会を提供 |
支援の位置づけ | 一時的な訓練の場 | 継続的な就労の場 | 継続的な就労の場 |
特徴 | 就職に向けた準備期間 | 一般企業に近い就労形態 | 福祉的な就労形態 |
支援内容の違い
就労移行支援では、就職に向けた訓練プログラムが中心です。基礎的な生活習慣の確立から、ビジネスマナー・職業スキルの習得・就職活動支援まで、体系的なプログラムが用意されています。就労継続支援は、実際の生産活動や業務に従事しながら、必要な知識や能力の向上を図るのが目的です。
A型事業所では、データ入力やカフェ運営・商品の包装・清掃など、一般企業に近い業務に従事します。B型事業所では、より簡易な作業から始め、状況に応じて作業内容を広げていきます。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
主な支援内容 | 就職に向けた訓練プログラム | 実際の生産活動や業務従事 | 実際の生産活動や業務従事 |
訓練・作業の特徴 | 基礎的な生活習慣の確立、ビジネスマナー、職業スキル習得、就職活動支援 | データ入力、カフェ運営、商品包装、清掃など一般企業に近い業務 | 簡易な作業から開始し、状況に応じて作業内容を拡大 |
プログラムの特徴 | 体系的な訓練プログラム | 実践的な業務経験 | 個人の状況に応じた柔軟な作業設定 |
利用期間の違い
就労移行支援は原則2年以内という期限が設けられています。これは一般就労への移行を前提としているためです。期限を設けることで、計画的な訓練と就職活動を行うことができます。
ただし、状況に応じて期間の延長が認められる場合もあります。一方、就労継続支援には利用期間の制限がありません。利用者の状況や希望に応じて、長期的に継続して利用することができます。就労継続支援A型・B型ともに、安定した就労の場として継続的な利用が可能です。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
標準利用期間 | 原則2年以内 | 制限なし | 制限なし |
延長可否 | 状況に応じて可能 | – | – |
利用形態 | 一時的な訓練の場 | 継続的な就労の場 | 継続的な就労の場 |
給与・工賃の違い
就労移行支援では、訓練が主目的のため、基本的に賃金は発生しません。一方、就労継続支援では、A型・B型ともに収入を得ることができます。A型は雇用契約に基づくため、最低賃金以上の給与が保障されています。
令和2年度の実績では、A型の平均月額給与は79,625円でした。B型は雇用契約を結ばないため工賃制となり、作業量や成果に応じた工賃が支払われます。B型の平均月額工賃は15,776円です。この収入面の違いは、利用を検討する際の重要な判断材料となります。
就労移行支援 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
雇用契約 | なし | あり | なし |
賃金形態 | 基本的に発生しない | 給与制 | 工賃制 |
金額の基準 | – | 最低賃金以上を保障 | 作業量や成果に応じる |
どのサービスを選べばよいか

就労支援サービスの選択は、利用者の状況や希望に応じて慎重に検討することが重要です。
一般就労を目指す場合の選び方
一般企業での就労を希望する場合は、就労移行支援の利用がおすすめです。就労移行支援では、以下のような企業就労に向けた体系的な訓練を受けられます。
- 基礎的な生活習慣
- ビジネスマナー
- 職業スキルなど
2018年からは就労定着支援事業も開始され、就職後も最長3年間のサポートを受けることも可能です。就労定着支援では、職場での悩みや課題への対応・職場との調整など、きめ細かなフォローアップが行われます。
福祉的就労を希望する場合の選び方
一般企業での就労に不安がある場合は、就労継続支援の利用を検討するのもよいでしょう。就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働くことができる方が対象です。最低賃金が保障され、一般企業に近い環境で働くことができます。一方、B型は雇用契約を結ばず、より柔軟な働き方が可能です。体調や状況に応じて作業量を調整でき、無理のないペースで働くことができます。
年齢制限がないB型は、高齢の方や体力面での不安がある方にも適しています。それぞれの特徴を理解し、自身の状況に合った選択をすることが大切です。
利用開始までの流れ
就労支援サービスの利用を希望する場合は、まず市区町村の窓口に相談してみましょう。障害福祉サービスの利用に際しては、サービス等利用計画の作成が必要です。計画相談支援事業所で、利用者の状況や希望を踏まえた計画を作成します。
実際の利用開始までに、見学や体験利用を通じて自分に合った事業所を選択します。見学では、実際の訓練や作業の様子を確認し、支援内容や環境が自分に適しているかをよく確かめましょう。体験利用で実際のプログラムや作業を体験し、自分に合っているかどうかを確認するのもおすすめです。
まとめ|就労移行支援と就労継続支援の違いのポイント
この記事では、就労移行支援と就労継続支援の違いについて解説してきました。就労移行支援は一般企業への就職を目指す方向けの制度で、就労に必要なスキルの習得から就職活動までの体系的な支援を受けられます。一方、就労継続支援は働く場を提供する制度で、A型は雇用契約に基づいた就労の形態、B型は福祉的な就労の場として機能するのが特徴です。
さいたま市浦和区にあるアイトライ(旧:アイトライさいたまセンター)では、就労移行支援をはじめとする各種支援サービスを提供しています。社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を持つスタッフが、一人ひとりの状況に合わせた丁寧なサポートを行っています。
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