統合失調症の方に向いている仕事とは?支援制度も詳しく解説

統合失調症は100人に1人が経験する病気で、決して珍しい病気ではありません。病気を理解し、適切な環境で働くことができれば、多くの方が社会で活躍できます。この記事では、統合失調症の方に向いている仕事の特徴や具体的な職種、長く働くためのポイントについて解説します。

目次

統合失調症とはどのような病気なのか

統合失調症は、脳内の神経伝達物質に異常が現れ、心や脳の状態がまとまりにくくなる病気です。原因は明確にはわかっていませんが、仕事や人間関係のストレス、生活環境の変化なども影響するといわれています。

統合失調症の主な症状

統合失調症の症状は、陽性症状・陰性症状・認知機能障害の3つに大きく分類されます。これらの症状は一人ひとり異なり、症状の組み合わせや程度も様々です。

陽性症状幻覚や妄想といった症状があります。実際には存在しないものが見えたり聞こえたりする体験や、誰かに監視されているような被害妄想を感じることがあります。この症状は薬による治療が効果的です。
陰性症状意欲の低下や感情表現の乏しさとして現れます。以前は楽しめていた活動に興味が持てなくなったり、周囲の出来事に関心を示さなくなったりすることがあります。この症状は周囲から怠けているように誤解されやすい特徴があります。
認知機能障害記憶力や注意力、判断力の低下が見られます。新しい情報を覚えることが難しくなったり、一度に複数の作業を行うことが困難になったりします。

仕事をする上での影響と課題

陽性症状により、周囲の視線が気になって仕事に集中できなくなることがあります。会話の内容が支離滅裂になってしまい、円滑なコミュニケーションが取りづらくなる場合もあるかもしれません。

陰性症状では仕事への意欲が湧きにくく、周囲から誤解を受けることもあります。認知機能障害は仕事に大きな影響を与えることがあり、作業の手順を覚えるのに時間がかかったり、優先順位をつけることが難しいケースも多いです。

体力面では疲れやすさを感じることが多く、フルタイムでの勤務が難しいこともあります。気分の波や体調の変化により、定期的な通勤や勤務が困難になることもあります。ただし、これらの課題は適切な職場環境と周囲の理解があれば、克服することは十分可能です。

統合失調症の方に向いている仕事の特徴

統合失調症の方が働きやすい仕事には、いくつかの共通する特徴があります。これらの特徴を知ることは、職業選択の重要な指針になります。

規則正しい勤務時間の仕事

規則正しい勤務時間の仕事は、体調管理の面で大きなメリットです。毎日同じ時間に出勤し、決まった時間に帰宅できる環境は、生活リズムの維持に役立ちます。シフト制や深夜勤務は体力的な負担も大きく、症状を悪化させる可能性があるため無理は禁物です。

体力や症状に合わせて徐々に勤務時間を延ばしていける環境は、長期的な就労継続につながります。休憩時間が適切に設定されており、必要に応じて小休憩を取れる職場も、働きやすい環境であるといえます。

マイペースで進められる仕事

自分のペースで仕事を進められる環境は、統合失調症の方にとって重要な要素です。突発的な対応や時間に追われる作業が少なく、自分の体調やリズムに合わせて進められる仕事が適しています。たとえば、データ入力や書類整理などの事務作業は、自分のペースで着実に進めることができます。

また、他者との過度な関わりが少ない仕事環境も、心理的な負担が少なくてすむので、おすすめです。常に他者とコミュニケーションを取る必要がある仕事は、精神的な疲労を引き起こすことがあります。

手順が明確な仕事

作業手順が明確でマニュアル化されている仕事は、統合失調症の方にとって取り組みやすい業務です。認知機能障害により新しい情報を覚えるのに時間がかかる場合でも、手順書があれば確認しながら作業を進められます。

また、作業の完了基準が明確な仕事は、達成感も得やすいです。臨機応変な判断や柔軟な対応が求められる仕事は、状況判断の負担が大きく、ストレスの原因になることがあります。

統合失調症の方におすすめの具体的な職種

実際の職種として、いくつかの働き方が統合失調症の方に向いているといわれています。これらの職種は、先に述べた特徴を多く備えています。

事務職での働き方

事務職は統合失調症の方に適した職種の一つです。データ入力・書類整理・ファイリング・伝票処理など、定型的な業務が中心となります。これらの作業は手順が明確で、自分のペースで進めることができます。

また、一般的に勤務時間が規則正しく、急な残業も比較的少ないのが特徴です。障害者雇用枠での募集も多く、企業側の理解も得やすい職種であるといえます。一つひとつの作業を確実にこなすことで、仕事の達成感も得られやすい環境です。

製造業や軽作業での働き方

製造業や軽作業の現場は、作業手順が明確で分かりやすい仕事が多いです。部品の組み立て・商品の検品・在庫管理・商品の梱包など、マニュアルに沿って進められる作業が中心となります。

黙々と作業に集中できる環境であることが多いため、心理的な負担が少ないのがメリットです。多くの職場で作業手順書が完備されており、一度覚えれば継続的に同じ作業を行えます。休憩時間も規則的に設定されており、体力的な負担も調整しやすいです。

在宅ワークでの働き方

在宅ワークは通勤による負担がなく、自分の体調に合わせて柔軟に働ける環境です。データ入力やテープ起こし・Webデザイン・イラスト制作など、様々な職種があります。体調に応じて休憩を取りやすく、自分のペースで仕事を進められることも大きなメリットです。

オンラインでのコミュニケーションが中心となるため、対面での対人関係の負担が少なくてすみます。仕事内容によっては、納期さえ守れば時間の使い方を柔軟に調整可能です。

統合失調症の方が仕事を選ぶときのポイント

職業を選ぶ際は、いくつかの重要な観点があります。これらを考慮することが、働きやすい環境を見つけるカギになります。

自分の体調やペースを大切にする

統合失調症の方が仕事を選ぶときは、自分の体調管理を最優先に考える必要があります。フルタイムでの勤務が難しい場合は、1日4時間程度の短時間勤務から始めることも検討しましょう。

疲れやすさや集中力の持続時間には個人差があるため、自分の状態をしっかりと把握することが大切です。自分の体調とペースを保ちながら働ける環境を選ぶことで、長期的な就労継続が可能になります。

障害者雇用枠の活用を検討する

障害者雇用枠での就職は、短時間勤務や勤務時間の調整、休憩時間の確保など、体調に合わせた働き方について相談しやすい環境です。障害者手帳を持っている場合は、この制度を積極的に活用することで、より働きやすい環境を得られる可能性があります。

ただし、障害者雇用枠の求人数は一般枠と比べると少なく、希望する職種や条件の求人を見つけるのに時間がかかる場合もあります。また、障害者手帳の取得には医師の診断書が必要であり、症状や状態によって判定されるため、希望すれば必ず取得できるわけではありません。

就労支援サービスを利用する

就労支援サービスは、仕事探しから職場定着まで、幅広いサポートを提供しています。これらの支援機関は無料で利用できるものが多く、専門家のアドバイスを得ながら、自分に合った仕事を探すことができます。

ハローワーク精神障害者トータルサポーターという専門スタッフがいて、相談や職業紹介を行っています。
障害者就業・生活支援センター就労に関する相談だけでなく、生活面での悩みにも対応してくれます。
就労移行支援事業所職業訓練や実習を通じて、働くために必要なスキルを身につけることができます。

まとめ

統合失調症があっても適切な環境があれば、多くの方が仕事で活躍できます。大切なのは、規則正しい勤務時間、マイペースで進められる環境、手順が明確な仕事など、自分に合った職場を選ぶことです。

事務職・製造業・在宅ワークなど、統合失調症の方に向いている職種は数多くあります。また、体調管理を最優先に考え、障害者雇用枠の活用や就労支援サービスの利用も検討するとよいでしょう。一人で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。

就職活動や働き方でお悩みの方は、アイトライ浦和センター(旧:アイトライさいたまセンター)へご相談ください。看護師・社会福祉士・精神保健福祉士・キャリアコンサルタントなどの資格を持つスタッフが、お一人おひとりの状況に合わせて丁寧にサポートいたします。

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